読んでみたいと思いつつ、物語の長さと、聞くところによる読了ギブアップ率に慄き、手を出せずにいた『ドグラ・マグラ』。憑かれたんぢゃないかと思ふやうな速度で竟に読み通したのであるが、一睡したのちも心奪はれた儘でゐる。
内容に触れることは止します。この作品の読み難さというのは恐らく、トリックじみた構成のみならず、その豊富な文体にあるのではないだろうか。文章的に、現代日本語と比較して取っ付きにくい箇所はそこそこあるな。漢文調や論文調が苦でないばかりかどうやら好きらしい私には垂涎ものでしたが。
読んでいる最中、これが本当に戦前に書かれたものなのか……と何度も疑いました。構成に手が込んでいます。そして古くない(と思うのは、私の読書量があまりにも少ない所為やもしれません)。つい先ほどは、現代日本語に慣れ親しんでいる身では難解だとか何とか書いておきながら、言い回しまで古くないように思われてきたのでした。おかしい。
それにしても、読了した者は一度は精神に異常を来す云々の宣伝文句。知りながら、「ハハン……これくらいがドウだ、たいしたことないじゃないか」と中盤までは笑っていたのですが、読み終えてしまうと笑ってもいられない。こいつは確かにとんでもない(褒めてる)、としばらく空を見詰めました。
しかし私は一向に、精神に異常を来してなどおりません。アッ……最初から異常なのだった……ウーン、うっかり、うっかり。
そういう訳でとんと作文に手が付かなくなり、本館の更新は滞るばかりという。大きな仕事も一つ控えているし、じたばた藻掻き回らず大人しくしていよう。
私一人が藻掻いたところで、世界には漣一つ立ちはしない。よしよし。それならばと一層息を潜めるばかり。
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